再生医療「ミノキシジル・メソセラピー」はAGAに効果がある?

前回は、市販で購入できるミノキシジルの効果や、内服(タブレット)の危険性についてご説明いたしました。

1. 市販で購入できるミノキシジルや内服(タブレット)の効果と副作用
2. 再生医療「ミノキシジル・メソセラピー」はAGAに効果がある?(本記事)
3. 植毛とは何か?仕組みと自毛植毛の安全性について

 

今回は、再生医療「ミノキシジル・メソセラピー」がAGAにどのような効果をもたらすのかをご説明していきます。

なお、本記事では一般的な医学知識を紹介しております。ご自身の症状に関しては、必ず医師や専門家にご相談ください。

AGAの治療とは?

薄毛の原因「男性型脱毛症(AGA)」

AGAは頭頂部、生え際等でゆっくりと薄毛が進行する病気で、体内で生まれた悪性男性ホルモンの“DHT(ジヒドロテストステロン)”の 作用で、毛を生み出す器官“毛包”が徐々に小さくなっていきます。

小さい毛包から作られる毛は細く柔らかくなり、成長する期間も短くなるため、結果的に髪が通常よりはやく抜け落ちてしまうのです。

治療の方法は大きく分けて2種類あり、今回は毛髪を再生させる治療について詳しくお話します。

悪性男性ホルモンのDHTを減らして進行を止める“予防治療”と、小さくなった毛包を大きくし、再び強い髪が生えるようにする“毛髪再生医療”の2種類です。

実際に治療を行う場合、進行度や症状に合わせて両方の治療を継続的に行うのが一般的です。

“予防治療”は別の記事で解説していますので、今回は“毛髪再生医療”について詳しく解説していきます

毛髪再生治療の種類

毛髪再生治療は、年々治療法が増えてきている分野です。一般的に行われている毛髪再生治療法は、

  1. ミノキシジル成分をつかった治療
    1. ミノキシジル塗り薬
    2. ミノキシジル飲み薬
    3. ミノキシジル注射(メソセラピー)
  2. 再生医療技術を用いた注射
  3. 手術治療(自毛の植毛手術)

に分けられ、症状や希望に応じて行われます。

今回はその中でも「治療薬を直接頭皮に注射」を行う、ミノキシジル・メソセラピーについて。

ミノキシジル成分をつかった治療

最も一般的で歴史も長いのは“ミノキシジル”という薬の成分を使った治療です。塗り薬が代表的で、症状が軽い方でも併用をしています。

ミノキシジルは飲み薬として処方されることもありますが、ミノキシジルの飲み薬は塗り薬に比べて副作用も強くなるので注意が必要です。

また、ミノキシジルと他の有効成分を配合した薬と直接頭皮に注射する”メソセラピー”という治療もあります。

再生医療技術を用いた注射治療

再生医療技術を用いた注射が最も新しい治療です。

患者さんご自身から採取した血液細胞や脂肪細胞を、治療に有効と考えられている成分に加工し、頭皮に注射する治療です。

自分自身の細胞を使って治療を行うため、再生医療治療には心理的にも安心でき、実際に副作用も減らせるというメリットがあります。

従来は薬で効果が出ない人には手術がすすめられていましたが、頭部にメスを入れることに抵抗感のある人も多くいらっしゃいました。再生医療技術の治療はそうした薬の服用と手術の間を埋める治療として注目されています。
詳しい解説

手術治療(植毛手術)

症状が進んでおり、希望される方には植毛手術が行われます。自身の後頭部など、薄毛が進行していない部位の毛を皮ふごと移植します。

手術を終えれば毛髪が生えている状態にすぐ戻ることができるため、植毛手術は、「1年後の結婚式までに」など増毛したい期日が明確な人に特に適した治療法です。
詳しい解説

「治療薬を直接頭皮に注射」メソセラピー

AGA治療に限らず、有効成分を患部に直接注射する直接注入する治療を“メソセラピー”といいます。

飲み薬や塗り薬は治療薬が作用する部位に達するまで時間がかかりますが、メソセラピーでは治療したい部位に直接お薬を送ることができるため、より効果が出やすいと考えられています。

AGA治療でも近年メソセラピーが採用されるようになり、

専門クリニックのうち、メソセラピーを扱っているクリニックで治療を受けることができます。

施術の際には、針を使わず水圧を用いて成分を注入する“ノンニードル注射”や針のある場合でも“麻酔クリーム”が使われることがほとんどです。

そのため、“注射”といっても痛みを和らげてもらいながら、頭皮に治療を受けることができます。

メソセラピーで注入する成分

頭皮に注射される成分は大きく分けて「薬剤成分(緑色)」と「成長を促す成分である“成長因子”(赤色)」という2つです。保護成分として、「ビタミンやミネラルを配合(青色)」することもあります。

具体的な成分や配合の割合はクリニックによって異なります。

薬剤成分としては、ミノキシジルが配合されることが多いです。

クリニックによっては、予防治療薬のうち副作用が弱い“フィナステリド”というお薬も配合されることもありますが、フィナステリドを直接頭皮に注入する科学的な根拠はあまりありません。

メソセラピーの成長因子について

“成長因子”は、簡単に言うと生き物の体内に存在する細胞の増殖や分裂を促す成分のことです。細胞が増えることで、その器官は大きくなり、傷ついていた場合は傷が治ります。

そのため“成長因子”が作用する部位は細胞が成長し、傷も修復されます。

“成長因子”を頭皮に注入することで、小さくなった毛包を成長させるのが注射をする狙いです。メソセラピーでは、人工的に作成した“成長因子”を注入します。

“成長因子”がメソセラピーの重要な鍵となります。クリニックによっては、海外製の粗悪な“成長因子”を使っていたりするため、“成長因子”すら入れていない場合もあり、注意が必要です。

メソセラピーの対象となる方

塗り薬を長年使ってきて効果が頭打ちになっている方、塗り薬も含めて出来るだけ発毛効果を期待したい方、などを対象に行われることが多いですが、症状や患者さんの希望に応じて実施されます。

成分や注射方法に応じて料金はまちまちが、きちんと効果を期待するとなると、塗り薬と比較するとどうしても高価になってしまうのが難点です。

再生医療技術を用いた治療

「自分の細胞から発毛パワーを取り出す」PRP注射

PRP注射もメソセラピーの1つです。一般的なメソセラピーとの違いは、“PRP(多血小板血漿)”はお薬ではなく、自分の細胞から作られる成分である点です。

“PRP”は多血小板血漿の略で、患者自身の血液から培養した成長因子を多く含んだ有効成分です。

“PRP”を皮膚に投与する治療は、厚生労働省が再生医療と定めており最近注目を集めています。患者さん自身の血液を利用するため、安全性が高いと考えられています。

PRPは血小板という成分から作られる

PRPは血液細胞から“血小板”という成分を取り出します。血小板は、白血球や赤血球などと血液を構成する成分で、かさぶたを作りケガを治すはたらきをします。

血小板は、カプセルのような構造をしており、中には細胞の成長と再生を促す成長因子が入っています。成長因子が傷を癒やす役割をするのです。

遠心分離という特殊な処理を経て、“血小板”が多く含まれるように濃縮抽出したものをPRPと呼びます。カルピスの原液みたいなイメージです。

(参考:成長因子の役割は『メソセラピーで使う成長因子』)

PRPを活性化し頭皮に注入する

自分の血液から抽出したPRPを薄毛が進行した部位に注入します。

実際に注射するPRPは、活性化という特殊な工程を経て、血小板の中に入っている成長因子をより多く抽出する加工が行われており、成長因子が体内の細胞へと届きやすいようになっています。

PRPを加工することにより、高濃度の成長因子を利用することができます。

PRP治療による効果と副作用

PRP治療は、もともと自分の体内にあった成分を注射する治療なので、安全性が高いと考えられています。メソセラピーで注入される成長因子は自分の体内にあったものではないので、その点が異なります。

まだ新しい治療であるため、効果を検証する研究は現在さかんに行われています。

既に行われた実験の中では、対象となった患者の数が少ないですが毛が生える効果があったと報告しているものもあります。

新しく登場した、安全性も高い治療ですが、設備が整っているクリニックでないと受けることができません。

一人ひとりの血液からオーダーメイドする治療になるため、実際に注射を受けられるまで時間がかかることと、必要なお金も高額になることも多いです。

「自分の脂肪から万能な細胞を取り出す」脂肪の幹細胞注射

脂肪の幹細胞治療は、脂肪細胞を使った再生医療です。

薄毛治療をする前に、お腹の手術を行い、皮下にある脂肪をとらなければいけません。とってきた脂肪を特殊な機械をつかって、加工してごく少量の幹細胞(かんさいぼう)を取り出します。

幹細胞とは、どんな細胞にもなれる万能の細胞です。この治療で使う幹細胞は、脂肪の細胞からとってくるため、脂肪になりやすい幹細胞です。

その幹細胞を頭皮にいれると薄毛が治るという治療ですが、この幹細胞自体が、毛母細胞になるかどうかは、現時点では疑問が残ります。

世界的にみても実施の件数が少なく、ドイツでは学会発表もされていますが、数としては少なく、現時点ではおすすめしにくい治療となっています。

また、薄毛治療のために、お腹にメスを入れるような手術をすることになるため、患者さんに負担がかかるのも現在の課題です。

植毛とは何か?仕組みと自毛植毛の安全性について

各治療の比較

各治療を比較した表になります。

参考文献

2002年のアメリカの論文

J Am Acad Dermatol. 2007 Nov;57(5):767-74. Epub 2007 Aug 29. Multicenter Study; Randomized Controlled Trial; Research Support, Non-U.S. Gov’t

1999年 New England Journal

N Engl J Med. 1999 Sep 23;341(13):964-73. Review