現時点で受けられるAGA・薄毛治療の方法と副作用について医師が解説

男性型脱毛症を徹底的に解説する『AGA解説シリーズ』の2回目になります。

前回の記事「薄毛の原因は?男性型脱毛症(AGA)でなぜハゲるのか」では、若いときの薄毛を引き起こす原因の一つであるAGA(男性型脱毛症)とは、どのような病気なのかについて、症状・原因・メカニズム・診断という観点からご説明しました。

「AGAになると、どうして薄毛になってしまうのか」という理由を少しは理解していただけたと思います。

今回、もう少しふみこんで”AGAの治療について”ご説明します。

「治療を受けることで、薄毛の症状がどうなるんだろうか」
「AGA治療にはどんな種類があって、自分はどの治療方法があうんだろう」
「果たして、治療は本当に効果が出るんだろうか」

こうした疑問をもった方は、この記事を読むことで、AGA治療に対する理解が深めていただけます。

“AGAとはどのような病気なのか”をおさらいしつつ、AGA治療が信頼できる理由、AGA治療方法の種類、具体的なAGAの治療を紹介していきます。

なお、本記事では一般的な医学知識を紹介しております。ご自身の症状に関しては、必ず医師や専門家にご相談ください。

◉AGAとはどのような病気か

現時点で受けられるAGA・薄毛治療の方法と副作用

治療のメカニズムを理解していただくために、AGAの基本的な部分をおさらいしておきましょう。

AGAとは

AGAとは、“頭頂部(頭のてっぺん)、おでこの生え際、前頭部(頭の前の方)などの部位で少しずつ、毛髪が短く細いものになっていく病気”でしたね。

AGAになると、ストレスが増え、生活の質(QOL)が低くなることが、同時に問題になることもあります。こうした問題もAGAと一緒に治療することができます。

AGAが起きる原因は、遺伝が主要な原因の1つだと考えられています。

AGAが進行するメカニズム

悪玉の男性ホルモンといわれる“ジヒドロテストステロン(DHT)”が原因でAGAは進行します。AGAが進行するメカニズムは、

  1. テストステロンが、体内の酵素である“5-αリダクターゼ”と反応し、DHTへと悪性化する
  2. DHTにより、毛を作り出す“毛包(もうほう)”を徐々に小さくする遺伝子をオンになる
  3. 毛包が小さくなると、毛の成長する期間も短くなり、毛の生え変わりの周期がはやくなり、薄毛になる

詳しくは、前回の記事を参考にしてください。

◉AGA治療は、なぜ信頼できるのか?

AGAが進行するメカニズムについては、理解いただけたかと思います。

このAGAが進行するメカニズムにもとづいた治療薬が現在は発見されており、AGAは医学的にみて“治療可能な病気”であるということをご存知でしょうか。

とはいっても、「本当に治療の効果がちゃんと自分にも出るか」というのも気になりますよね。

そこで、“AGA治療が信頼できる理由”についてご説明します。

薄毛対策が“うさんくさい”は業界の闇

薄毛対策が“うさんくさい”は業界の闇

説明の前に、「育毛治療だなんて、なんだかうさんくさい!」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。

薄毛対策の商品や治療のなかには、怪しいものが多いのは事実です。薄毛対策品には、医学的に信頼できない商品やサービスが、まぎれこんでいます。

これは率直にお伝えすると、薄毛に悩める人のこころにつけこんだ“業界の闇”としか言いようがありません。一度、頭をリセットして続きを読んでくださいね。

AGA治療が”信頼できる”理由を解説します

AGA治療は医学的な根拠に基づいた、“信頼できる”治療なのですが、「医学的な根拠に基づいた信頼できる治療」とは一体なんなのでしょうか?

広告を見て「効果的な治療」「有効な治療」といわれると、良い治療な気がしませんか?

でも気をつけてください。「効果的」なだけでは、良い治療とは言えません。

例えば、「とても効果は高いけれど、安全性がとても低い治療」を想像してみてください。効果はあっても、副作用で苦しむとなれば、良い治療とは言えませんよね。

治療は“効果”と“安全”のバランスが大切
治療を実施する上では、効果だけでなく「薬によって生じる副作用に患者がどれだけ耐えられるか」も同時に考えないといけません。

「治療に耐えられるか」という指標は、専門用語で忍容性(にんようせい)といいます。簡単にいいかえると、忍容性とは“安全性”のことです。

“安全性”が高いほど、患者は治療に耐えられることを表すので、副作用が小さいことになります。

AGAは命に関わらない病気です。癌(がん)や心臓病とは違います。

ですので、AGA治療では有効性と安全性がともに高ければ、“より良い治療”である考えられます。

治療にはバランスが大事なのです。

安全性や有効性は”臨床試験”で検証される

それでは、治療の有効性や安全性はなにを根拠に判断するのでしょうか?

一般的に治療の有効性や安全性は、患者さんのグループに治療を行い、効果や副作用を調べ、結果を統計に分析する“臨床試験(りんしょうしけん)”によって確認されます。

誤解をおそれずに分かりやすくいうと、“臨床試験”とは、有効性や安全性を確認するための人体実験にあたるとイメージしてみてください。

臨床試験で、有効性や安全性を確認された治療は、実験の結果、根拠のある治療方法といえるのです。

“信頼できる”臨床試験の条件
臨床試験といっても、さまざまな試験があり、特に“信頼できる”試験というのがあります。信頼できる臨床試験を判断する基準は、とてもシンプルです。

  1. 試験に参加している患者さんの数
  2. 試験の実施された方法

患者さんの数が多いほど信頼できる
1つ目は、臨床試験に参加している患者の人数です。

データが多いほど結果が信頼できるのはイメージしやすいと思います。5人から集めたデータよりも500人から集めたデータの方が信頼できるということです。

信頼できる試験の手法がある
2つ目は、臨床試験を行うやり方です。

統計学ではどのような手法で試験を行えば、信頼レベルの高い証拠として扱える結果が得られるかが明らかになっています。

難しいことはさておき、下の表をみてください。

医師が診断を行う際に証拠となる試験の一覧で、上に行くほど「より信頼できる証拠」となります。

逆に、表の下のほうにある「〇〇先生がおすすめする治療」という治療方法は、専門家個人の意見であり、医学的根拠が最も低いとされ、信頼されないランクVIに位置づけられます。

AGA治療には信頼できる試験が多数

AGA治療の多くは、表の上位ランクに位置する“メタアナリシス”、“ランダム化比較試験”という医学的に信頼できる方法で、効果や安全が確認された試験が多数あります。

育毛サロンや育毛商品では、こうした医学的に信頼できる試験がないにもかかわらず、オリジナル育毛法などといって提供しているところもあり、注意が必要です。

AGA治療は、効果も安全性も高いことが、信頼できる方法で確認されているから、多くのAGA専門クリニックでは治療を提供しているのです。

◉AGA治療の種類と副作用

AGAと診断された方や疑われている方にとって、「治療をうけることで、どのような状態になれるのか」という点が、実際に治療をうける上で気になるかと思います。

予防と再生を組み合わせたAGA治療方法

AGAの治療方法は、大きく2つに分けられます。

  1. AGAの発症進行を予防する治療(AGA予防治療)
  2. AGAで失った毛髪を再生する治療(AGA毛髪再生治療)

AGAは、悪玉男性ホルモン“DHT”が作用して、毛髪を生み出す毛包を小さくすることで進行します。

予防治療とは、体の中でのDHTの濃度を下げる治療です。体内でDHTが作られるのを防ぐ治療にあたるので、体内に取り入れるような飲み薬が多いです。

一方でAGA毛髪再生医療とは毛を太く、強くする治療が当てはまり、頭皮に直接実施するような治療方法が中心となります。

AGA治療の使い分け
一般的なAGA治療では、この「予防治療」と「毛髪再生治療」の2つを組み合わせて行います。

既にAGAを発症している人は、さらなる進行を予防する治療をおこないつつも、予防する治療だけでは、効果が不十分な場合は、毛髪自体を増やすような治療も同時に受けるのが一般的です。

AGAの初期段階にある人も、進行をおさえる治療を受けることで、AGAの発症を予防することが可能になります。

また、予防治療・毛髪再生治療の両方とも、効果を維持するために適切な治療を受け続ける必要があるため、通院しやすさは重要になってきます。

AGA治療の副作用

どのような病気の治療にも副作用はあり、AGAの治療にももちろん副作用が存在します。少し脅かせてしまいましたが、きちんと医療機関で定期的に診察を受けていれば、コントロールできる副作用がほとんどなので、そこまで不安にならないでください。

AGAの治療は、一般的に副作用が少ない治療だと言われています。しかし、妊娠中の女性や子供が誤って使用した場合、深刻な副作用をもたらすものもあります。

例えば、女性への利用について、厚生労働省が注意喚起をしているお薬もあり、薬の扱いには特に注意が必要です。(厚生労働省ウェブサイト

頻度は少ないのですが、性的な機能障害(性的な元気さがなくなる)になったり、塗り薬では皮膚の炎症を引き起こしたりすることがあります。

心臓病を引き起こすような強いタイプのお薬もあり、現在、薬を使用していて副作用に悩まれている方、海外から個人輸入をして勝手に服用している方はすぐにAGA専門医に相談するようにしてください。

具体的なAGA治療方法を紹介

最後にAGA治療の具体的な種類を紹介します。このページではAGA治療の全体像を理解していただくことを目的としているので、各治療法については別のページを確認してくださいね。

進行を緩やかにする“予防治療”と治療には毛髪を増やす“毛髪再生治療”の2種類あることを理解いただけたかと思います。

  1. 予防的な治療:飲み薬など
  2. 従来の毛髪再生治療:塗り薬、注射治療など
  3. 新しい毛髪再生治療:再生医療、植毛手術など
  4. それぞれ代表的な治療を簡単にご紹介します。

AGAの予防的な治療
予防治療は悪性男性ホルモンのDHTを減らす治療です。DHTを作る酵素5-αリダクターゼのはたらきを抑えることで作用する飲み薬を使います。

現在のところ、“フィナステリド”と“デュタステリド”という二種類の内服薬(飲み薬)があり、一部のAGA専門クリニックで処方されています。

フィナステリド
フィナステリドは、飲み薬として処方されます。

厚生労働省認可の医薬品が多数販売されており、一般の内科医も含めて広く使われていますが、出回っているお薬には偽物や粗悪品も多くあるため注意が必要です。

参考までに、この写真はファイザー社製のフィナステリドになります。

フィナステリド錠
デュタステリド
デュタステリドもフィナステリドと同じタイプの作用をもつ飲み薬です。フィナステリドよりも新しいお薬になります。

前立腺の疾患の治療薬としても使われます。

薄毛治療薬として厚生労働省に認可されているのは、1種類(GSK社のザガーロ®という商品名)のみです。アボルブ®も正式に認可されていますが、薄毛治療薬ではなく、前立腺治療薬として認可されています。

従来の毛髪再生治療

毛髪再生治療は、毛を太く成長させる治療法です。有名な成分では、ミノキシジルというお薬が代表的です。

ミノキシジル(塗り薬)
薄毛になった部位に用いる塗り薬です。「さらっとしたローションタイプ」「どろっとしたクリームタイプ」「泡状のフォームタイプ」があり、好みの使用感の種類を選ぶことができます。

期待できる効果
ミノキシジルという成分は、血管をゆるめて血流を良くし、毛包に栄養が運ばれるようにすることで、毛が生える効果があると言われています。

デメリット
肌にあわないと治療の継続が困難というデメリットもあります。また濃度によっては効果に差があり、どのタイプの薬を選べばよいか難しいです。

薬局で手に入る有名な商品
薬局や通販で購入できるタイプの育毛剤にも少量のミノキシジルが含まれています。

有名な市販薬であるリアップ®にも含まれています。市販薬には、ミノキシジル濃度に規制があるため、効果は処方薬に比べると含まれる量は限定的です。

有名な製品:リアップ®(大正製薬)、リグロEX®(ロート製薬)、スカルプD メディカルミノキ5®(アンファー)、ミノアップ®(東和薬品)

ミノキシジル(飲み薬)非推奨

ミノキシジルには飲み薬も存在します。毛髪が太くなる効果が認められていますが、残念ながら副作用が強いと考えられています。

特に心臓に負担がかかる副作用は、命にかかわることもあり、ミノキシジルを薄毛治療の飲み薬として使うことは、世界でも日本でも、推奨されていない治療になるので注意が必要です。

日本のAGA治療ガイドライン(2017年版)でも、効果が検証されておらず、リスクも高いため「内服使用を控えるように」とされています。

そのため本来は治療にはあまり用いないのですが、クリニックからすると手軽に処方できてしまうため、「知らずしらずのうちに処方されていた」といったケースもあり、AGA治療の処方は詳しい内容を医療機関に確認することはとても重要です。

ミノキシジル注射治療(メソセラピーとも言われる)、頭皮に直接薬剤を注射する治療方法です。

ミノキシジルの塗り薬でも十分効果は期待できますが、頭皮に直接注射をすることで、AGAの改善を目指す治療方法になります。メソセラピーでは、ミノキシジルだけでなく、育毛に必要と言われている様々な成分をまぜて注入することもあります。

新しい毛髪再生治療

近年、薬を使わない、新しいタイプの毛髪再生治療が登場しました。

薬を使わないため副作用は少ないと考えられ、発毛効果の期待できる治療として、国際学会等で注目を浴びています。最近になって、日本でも治療を受けられるようになりました。

新しい毛髪再生治療は、再生医療による毛髪再生治療と植毛手術治療があります。

再生医療による毛髪再生治療
自分の細胞から取り出した、毛髪の再生や成長に必要な成分を頭皮に注入する新しい治療方法です。

再生医療は注射治療で行われ、患者自身の血液を利用するもの(PRP療法)、脂肪細胞を利用するものがあり、厚生労働省が再生医療として定めている治療法です。PRP治療に関しては、手術をする必要がありません。

期待できる効果
頭皮内に成長に必要な成分を直接投与、血流が改善し、毛が太くなる効果を期待できます。

デメリット
治療開始や効果がでるまでに時間がかかる、限られた専門施設でしかできないという欠点もあります。

植毛手術治療

自身の後頭部の皮ふごと薄毛の部位に移植する手術を行う治療方法です。簡易的な移植手術として、後頭部に生えている毛を毛根ごと取って、移植する手法もあります。
後頭部の組織にはAGAの進行に関わる器官が少ないため、後頭部から前頭部や頭頂部に移植を行います。

期待できる効果
移植手術により毛髪を増やし、短期的に整容性を高めることができます。
デメリット
周囲にもバレやすいという欠点があります。

自毛植毛はアレルギーといった副作用の面では安全性は高いのですが、生着率(植えた毛がどれぐらいもつか)については、疑問が残ります。さらに、移植の材料になる後頭部の毛が薄くなるというデメリットがあります。

自毛植毛以外には、他人の毛を植毛する技術も存在しますが、有害事象があるためあまり推奨されていません。アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)は他人の毛の植毛を禁止しています。

◉AGA・薄毛治療方法まとめ

AGA治療の全体像について説明させていただきました。次のことを覚えておいてください。

  • AGAには予防治療と毛髪再生治療ができる
  • 治療を行う場合は、進行度や症状に合わせて両方の治療を継続的に行う
  • AGA治療は多く研究が行われており、効果や安全性が科学的に検証されている
  • 予防治療には飲み薬が普及しているが、偽物や粗悪品に注意が必要である
  • 毛髪再生治療には、塗り薬・注射治療・植毛手術治療があり、各クリニックで受けられる治療がちがう

次回は、予防治療、従来の毛髪再生治療、新しい毛髪再生治療方法ごとに、効果のメカニズム、副作用、使用に際しての注意などについてより詳しく説明していきます。