薄毛の原因は?男性型脱毛症(AGA)でなぜハゲるのかを医師が解説

「最近薄毛が気になり始めて、相手の目が少し気になるな」
「家族に薄毛の人がいるけど、自分は薄毛になりたくないな、、」

年齢とともに、どうしても薄毛が不安になりますし、薄毛が原因で昔よりも人前に出るのに自信がなくなった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

日本人で薄毛に悩まれる方の中には、AGA(男性型脱毛症)というう病気に該当すると言われています。

いわゆる「若ハゲ」で悩まれている方もぜひ読んでいただきたいです。

AGAは治療が可能な病気で、病院で適切な処置を受けることで症状の改善、もしくは予防が期待されます。

実際にAGAを治療されて、「人と会うのがまた楽しくなった」という方が大勢いらっしゃいます。

しかしながら「予防、治療ができる」と言われたところで、年を取ったら薄毛になるのは仕方のないことだ、という気がしてしまい、

薄毛については、本当のことなのかよくわからない!

というのが実際のところなのではないでしょうか。

仕組みのわからない問題(病気)に対して、解決策(治療)だけを言われてもピンとこないのは当然です。

そこで、本記事では「そもそもAGAとはどのような病気なのか」という基本的な部分について、わかりやすく紹介していきます。

具体的には

  • ・症状ーどのように薄毛が進むのか、併発する病気は何があるか
  • ・原因ーどのような人がAGAになるのか
  • ・メカニズムーどうして薄毛が進むのか
  • ・診断方法ーどのように判別されるか

についてご紹介していきます。

具体的な治療方法については、次回以降の記事で紹介していきます。

医師にただ「この薬は効きますよ」と言われて治療を受けるよりも、病気をご自身でよく理解された方が安心して治療に臨んでいただけると思います。

早速、AGAの全貌(ぜんぼう)を解き明かしていきましょう!

尚、本記事では一般的な医学知識を紹介しております。ご自身の症状に関しては、必ず医師や専門家にご相談ください。

AGAの症状ーどのように薄毛が進むのか、AGAに合併する病気

薄毛の原因「男性型脱毛症(AGA)」

AGAは男性の脱毛の中でよく見られる病気です。

早くて思春期後という比較的若い時点でも発症する可能性があります。

ひとことで言うと“特定の部位で少しずつ毛髪が短く、細いものになっていく病気”です。

ある部位で髪が短く細くなってしまうと、髪が覆う部分が少なくなるため薄毛になってしまいます。

髪が一気に抜けてしまったり、全く生えなくなったりするわけではありません。

日本語では“男性型脱毛症”と呼ばれ、英語のAndrogenetic alopeciaを略して「AGA」と呼ばれることが一般的です。

後ほど詳しく説明しますが、男性ホルモンが関わるため“男性型(Androgenetic)”という名前がついています。

AGAの特徴として進行速度と発症部位があります。

AGAの進行速度

個人差はありますが、AGAはゆっくりと進行します。

ある日突然、髪が抜けてしまうわけではなく、何年もかけて髪が短く細くなっていきます。

そのため、早期の発見と初期の治療が非常に有効的です。

AGAの発症部位

頭頂部(頭のてっぺん)、おでこの生え際、前頭部(頭の前方)の症状が代表的です。

AGAの関係する男性ホルモンがこれらの部位に影響を与えやすいため、この部位で症状が見られます。

薄毛の進行はパターンが多くの症例をもとに発見されていて、段階を経て進行していきます。

AGAになる確率について

年齢を重ねるにつれて、AGAとなる確率が増加します。さまざまな国の研究で有病率(AGAの病気となる頻度)が調べられた結果、人種や民族によって有病率が異なることがわかってきています。

たとえば、アメリカで行われた研究では、266人の健康な男性(18歳から49歳)のうち、48%で少なくとも中等度以上のAGA(AGA進行度III以上)となっていることがわかりました。(参考文献

アメリカでは、48%とAGAの頻度がとても多いように思えますが、韓国で行われた研究では、中等度以上のAGA(AGA進行度III以上)が5531人の男性(20歳以上)では、たった14%でした。20歳代(20歳〜29歳)では有病率がわずか2%であったのに対し、40歳代(40歳〜49歳)では11%にまで増加し、年を重ねるにつれてAGA発症頻度が高まっていると考えられます(参考文献)。

日本での研究によると、日本人男性のAGAとなる頻度は全年齢平均で約30%とアメリカと韓国の中間ぐらいの頻度になっています。日本の研究でも、20代で約10%、30代で20%、40代で30%、50代以降で 40数%となっており、年を重ねるにつれて、AGA頻度が高まるのは全世界共通であることが分かっています。(参考文献

AGA関連障害(がっぺいしょう)

AGAには一緒に発症する傾向があると言われている病気や関連障害があります。おどかすつもりはなく、中には怖い病気もあるのですが、頻度は少ないのでそこまで不安にならないでくださいね。

AGAの治療はこうした関連障害を減らすのにも有効だとみられています。具体的にどういった合併症が起こるのでしょうか。一つずつご紹介します。

心理的、社会的な悪影響

AGAの治療をすべき理由の一つとなるのが、社会的・心理的な問題です。AGAの症状である薄毛が原因で、日常生活のストレス増加、生活の質(QOL)の低下する可能性がさまざまな研究で明らかになっています(参考文献)。

実際に多い症状として

  • ・人の目が気になって気力がなくなる
  • ・毎日の生活に充実感がなくなる

などが見られます。

たしかに、薄毛で悩み受診される患者さんからよく聞く具体的なお声は、

  • ・若い時から薄毛が気になり、将来結婚できるか不安
  • ・パートナーが男性として見てくれていないような気がしてしまう
  • ・今の自分の姿を見られたくなくて、昔の友人に会えなくなってしまう
  • ・視線が気になって深くお辞儀をするのをためらってしまう
  • ・娘や息子の授業参観に出席するのが恥ずかしい

といった悩みの数々です。

実は、こうした悩みを抱えてしまうのもAGAという病気の症状の1つですので、不安を感じる必要はありません。お一人で悩まず、ぜひ専門家に相談してみてください。

心臓系の病気

AGA患者は心臓に関連した病気を発症するリスクが高いことを示した研究が過去に発表されています。

しかし、いまだ確実な関連性は発見されておらず、「リスクはない」という結論の研究も発表されています。

明確な治療のガイドラインはありませんが、治療薬の1種である“ミノキシジル”を服用する際には注意が必要なので、担当医師の指示に従うようにしてください。

前立腺がん

アメリカで2016年に行われた研究でAGAの患者は前立腺がんになるリスクが約56%高いという結論が発表されました。そのため、AGA治療を開始する前には前立腺がんの検査を実施します。

こうした合併症があるので、AGAの治療は検査ができる医療機関で行うことを推奨します。

薄毛、AGAの原因ーどのような人がAGAになるのか

AGA薄毛の原因
さまざまな研究が行われていますが、原因はまだはっきりとは分かっていませんが、少しずつ明らかになってきています。

現在最も主要な原因と考えられているのは遺伝です。AGAの遺伝について調査した研究をご紹介します。

2001年に行われたイギリスの研究では、幅広い年齢の男性572人の頭皮や髪質と家族の脱毛歴の調査をしました。その結果、父親がAGAだった男性はそうではない男性と比較して、自身もAGAになる傾向があり、AGAのリスク(病気になりやすさ)は約5倍だと報告されています(参考文献)。

2003年に行われたオーストラリアでの研究では、25歳から36歳までの双子(ふたご)を調べた研究では、遺伝子が同じふたごではAGAの進行度が似ており、遺伝的な影響をうらづける結果となりました。(参考文献

AGA発症の際に男性ホルモンと反応する体内の物質が、AGAの男性は通常よりも多いことが発見されており、親から子へ遺伝すると考えられています(後ほどメカニズムのパートで詳しく説明します)。

このように、AGAの原因は遺伝があると考えられています。遺伝は、ご自身の力ではどうすることもできず、AGAの発症は仕方のないことですので、ご自身を責めたり、自信を失う必要はありません。

ご家族に薄毛の方がいらっしゃる方は、医師や専門家に相談だけでもされることをおすすめします。

また、医学的な根拠はまだまだ足りませんが、不規則な生活習慣や洗髪をしないことによる不衛生による、頭皮環境の悪化も良くないと一般的に言われています。

生活習慣改善ガイドラインもゆくゆく、公開していきますね。

AGAの進行するメカニズムーどうして薄毛が進むのか

これまでに、AGAは“特定の部位で少しずつ毛髪が短く、細いものになっていく病気”であり、男性ホルモンが関係していると説明しました。

次に、AGAが進行するメカニズムの詳細を説明していきます。

AGAを引き起こす男性ホルモンについて説明する前に、そもそもホルモンとはどういったものか、について簡単に触れておきます。

ホルモンとは体内で生成される身体の様々なはたらきを調節する化学物質です。体の変化が起きても、身体機能が常に同じになるように保つ働きをしています。

ホルモンがはたらきを調節することができる臓器や器官にある細胞は、“受容体(じゅようたい)”というホルモンを受け取る部品で、ホルモンが受容体に結合することでそのホルモン特定の作用を引き起こします。

ホルモンの中でも男性の体で多く分泌されるものを男性ホルモン、女性の体で多く分泌されるものが女性ホルモンと呼ばれます。女性の体でも男性ホルモンは少量分泌され、逆に男性の体でも女性ホルモンは少量分泌されます。

AGAの原因となるのは“テストステロン”という男性ホルモンのひとつで、“男らしさ”をつかさどるホルモンです。

テストステロンは筋肉の量と強度の保持、血を作る作用、集中力強化など人体においてとても重要な役割を担っています。

男性の場合、男性ホルモンの95%が睾丸(きんたま)でつくられており、ほとんどがテストステロンであると言われています。

このテストステロンは体内に存在する酵素(5-αレダクターゼ)と反応すると、より強力なテストステロンへと変化します。

強力なテストステロンは、ジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれ、男性ホルモンの受容体(アンドロゲン・レセプター)と強い結合を起こし、薄毛や体毛の増加といった好ましくない影響を引き起こします。

そのため、DHTは悪性の男性ホルモンとも呼ばれます。

DHTと男性ホルモン受容体の結合体が、毛髪に影響を及ぼすメカニズムはどういったものでしょうか。人間の皮膚の下には“毛包(もうほう)”という毛を作り出す小さな器官があります。

男性ホルモン受容体の結合体がDHTとつながると、毛包をさらに小さくしていく遺伝子がスイッチオンになり、毛包を小さくする作用が活発になります。

毛包が小さくなると、毛包で作られる毛は細く、柔らかくなり、成長する期間も短くなるため抜け落ちるのが早くなります。下の図のように髪の成長サイクルのうち、髪が成長する期間が短くなります。こうした変化はヘアサイクルに応じて進むので、ゆっくりと時間をかけて進行します。

 

結果的に毛包が小型化した部位では、髪をおおう面積が小さくなり薄毛が進行してしまいます。これがAGAの進行するメカニズムです。研究ではAGA患者の男性は、正常な患者に比べてDHTの生産率が高いことが発見されています。

AGA患者の脱毛している頭皮に関する研究では、DHTを作り出す5-αレダクターゼという酵素の量と“男性ホルモン受容体”の量が、非脱毛部位に比べて多いという事実で裏付けられています。

このようにAGAの進行にはDHTと5-αレダクターゼが深く関わっています。実はまだ細かくは明らかになっていませんが、この酵素と受容体の量が遺伝することで、AGAが遺伝する原因だと研究者たちは考えています。

AGAの診断方法ーどのように判別されるか

AGA薄毛の診断方法
診断は主に“問診”、“身体検査”、“生体組織検査”の3つの方法で医療機関で行います。

基本的に問診と身体検査で判断が行われ、他の脱毛症と区別がしにくい場合には生体組織検査が行われます。

問診

問診では進行状況や抜け毛以外の症状、家族の病歴などを確認していきます。

これまでご説明したようにAGAはゆっくり進行する病気なので、診察を受ける患者さんの中には症状がはっきりとは出ていない方もいらっしゃいます。そのため、家族の病歴が判断に用いられることが一般的です。

抜け毛が急速であったり、痛みや炎症を伴う場合は他の病気の可能性もあるので、そういった症状の有無も確認します。

身体検査

必要に応じて、身体検査では目視と皮膚鏡を使った診断が行います。

目視

前述したAGA進行パターンに応じて、患者さんの薄毛の分布の比較が行い、一致した場合はAGAを疑います。

またAGAは毛髪が細くなる病気なので、毛髪が目立って見える色の紙を用いて、毛髪が小さくなっているかの確認も行われます。

こめかみの生え際(角額)から頭頂線の距離も診断の参考にしています。

皮膚鏡(ひふきょう)

皮膚鏡とは皮膚を拡大して観察できる、簡単な顕微鏡のようなものです。ダーマスコピーとも呼びます。

AGAが進行している部位の皮膚には毛髪の太さがばらつき、毛穴周辺のシミや黄色の斑点が見られます。

皮膚鏡を使って、こうした病的な所見を探します。

生体組織検査

組織検査は皮膚の一部をメスやパンチでとる検査ですが、痛みを伴うことも多く、問診や身体検査でほとんど診断できるため、基本的には行われません。まれに他の脱毛症と診断が難しい場合に行います。

他の脱毛症とその見分け方

脱毛の原因はAGA以外にも存在します。

AGAと他の症状が同時に発症する場合もありますが、他の症状と見分ける必要があります。

代表的な脱毛症は5つ挙げられます。

こういった疾患は病気であるため、サロンや美容室で安易に判断してもらわず、専門家による診察が大切です。

生え際の成熟

成人期の初期にホルモンによる正常な作用で、額の生え際が幼少期の位置から最大二センチ後退します。AGAの抜け毛の範囲はより広く、頭頂部も含むことがある点で異なります。

円形脱毛症

免疫の異常(めんえき)が原因で起きる、円形の連続していない範囲でおきる脱毛です。

AGAの進行は緩やかであるのに対して、円形脱毛症の進行は早いことが大きな違いです。

けん引性脱毛症

長期にわたって、もしくは繰り返し毛髪を引っ張ることでおきる脱毛です。女性に比較的多いです。オールバックを長年続けている方を想像してみるとわかりやすいでしょう。

髪型によるところが多いため、前頭部や側頭部で起こるのが一般的で、髪型と脱毛の関係があるため、問診や髪型の好みを照らし合わせて診断を行います。

瘢痕(はんこん)性脱毛症

瘢痕(はんこん)とは“きずあと”のことで、頭にけがなどの外傷があった後に毛髪を生み出す器官が傷つき毛が生えなくなる症状です。

怪我をしたところから毛が生えて来なくなるのを経験したことはないでしょうか。きずあとによる脱毛です。

AGAは毛が育つ期間が短くなる症状であり、毛が生えなくなるわけではないので、頭皮の検査では生まれたての毛が存在するかどうかが見分けるポイントになります。

抜毛癖

自身の髪を引っ張ってしまう精神障害です。

患者の病歴に基づいて診断が行います。ご自身で自覚されていることもあります。

薄毛治療、AGAの原因から進行サイクル、判断方法までを解説しました

薄毛の原因

AGAとはどのような病気なのかという基本的な部分について、症状・原因・メカニズム・診断という観点からご説明しました。

長くなりましたので、この重要なポイントだけは押さえておいてください。

  • ・AGAとは頭のてっぺん、おでこの生え際、頭の前の方で髪が細くなり、脱毛を起こす病気
  • ・AGAは、年齢とともに発症しやすくなり、ヘアサイクルに応じてゆっくりと進行する
  • ・AGAの合併症には、ストレス増加や生活の質の低下を同時に発症するが、AGAと一緒に治療できる
  • ・AGAの原因の一つは遺伝によるものと考えられており、発症はしかたがなく、家族に薄毛の方がいて心配な場合は専門家に相談するとよい
  • ・男性ホルモン(テストステロン)と酵素が反応してできる悪玉男性ホルモン(DHT)が原因でAGAが進行する
  • ・診断は主に家族の薄毛についての問診、病歴、薄毛の分布とAGAの進行パターンの比較で行う。

AGAがどのような病気であるかについてわかっていただけたのではないかと思います。次回はこれら、AGAについての基礎知識を踏まえて、治療についてご紹介していきます。